がん治療を受ける場合、経済的な不安のみならず、精神面や日常生活における不安に直面するケースは少なくありません。特に単独世帯の場合は、地域の支援リソースの活用や民間事業者の利用など、身近にサポートしてくれる方がいると安心に繋がるため、積極的に検討するのも良い方法です。
精神的サポートの必要性
がん告知を受けた直後は、強い焦りや不安、落ち込み(抑うつ)などのつらい感情に襲われることがあります。「がんとどう向き合っていけばよいのか?」という心理的な問題を消化するのに時間がかかることが普通であり、がんがうつ病などの精神疾患の原因になることも少なくありません。身近に相談できる経験者や力になってくれる専門家などがいれば良いですが、そのようなケースばかりとも限りません。
全国のがん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、地域がん診療病院などに設置されているがんに関する相談窓口として「がん相談支援センター」があります。その病院を受診している人でなくても無料で利用でき、がん専門相談員(がんに詳しい看護師、ソーシャルワーカーなど)が個別に相談に応じてくれます。病気そのものについて、治療、療養生活、心のケア、各種支援制度など、がんに関するあらゆる情報提供を行っています。
また、がん患者を支援するための団体も数多く存在します。「がん患者団体支援機構」は全国のがん患者会の相互の親睦と助け合いの活動を支援しており、全てのがん患者が納得のいく治療環境の獲得を目的に活動しています。地域によって差はありますが、東京都内には多くのがん患者団体や支援団体があり、「日本希少がん患者会ネットワーク」や「都民シルバーサポートセンター」「胸腺腫・胸腺がん患者会「ふたつば」」、「食道がんサバイバーズ」などもそのひとつで、東京都保健医療局のホームページには団体の一覧が掲載されています。
所得減少分を補填してくれる公的保障:傷病手当金
単独世帯の場合、配偶者や子どもなどのように家計を支えてくれる方がいないため、所得減少分のうち生活に必要な金額は予め保障などで準備しておく必要があります。ただし、公的保障である健康保険制度による所得補償は、(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業、(2)仕事に就くことができない、(3)連続する3日間 を含み4日以上仕事に就けなかった、(4)休業した期間について給与の支払いがないという条件を満たすとき、一日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が給付されるため収入減は3分の1となります。

また、所属企業の企業内保障の活用やグループ保険への加入によってさらに経済的負担が軽減される場合があります。公的保障の内容に加え、企業独自の保障内容まで十分に把握しておくことで、万一場合も安心して治療に専念できるでしょう。
一度、長期療養が必要になった際の保障内容について調べてみてはいかがでしょうか。
家事などの生活サポート
単独世帯においては日常生活の家事そのものが長期療養における悩みともいえます。家事代行サービスや宅食などのサービスもありますが、利用したことが無いとイメージが湧きません。どのようなサービスがあるのかを事前に見ておくと安心できるかもしれません。
宅食とは食事宅配のことで、調理済みの食事が冷蔵または冷凍の状態で自宅まで届き、温めるだけですぐに食事ができるお弁当をいいます。宅食は美味しくて栄養バランスに配慮されたメニューやコースが豊富であり、調理や片付けの必要がなく手軽です。
食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地株式会社は、がんの治療をされている方と家族の食事サポートを目的に「ヘルスケア Kitコース」を販売しており、療養中は食事を作れるとき、食べられるとき、食べられないとき、があるため状況に応じて食事や食材を提供してくれます。また、医師や管理栄養士が監修しているため、療養中の方も安心して食べられます。
がん保障を考える際には、治療よりも所得減少に重点を置き、生活支援についても事前の調べをしておくことが効果的です。