住まいの選択は私たちのライフスタイルを反映し、暮らしを豊かにする重要なプロセスです。
家は日々の生活を営む場であり、心身をリフレッシュする場所であるため、住まいづくりは個々のライフスタイルや価値観に合った空間を創り出すことが求められます。
住宅購入では「いま」を重要視するケースが一般的ですが、もっと「将来」を考えて購入すべきです。
極端にいえば、将来は違う場所に住みたいのであれば、いまは住宅を購入しないという選択も必要です。
さらに、住まいづくりには、将来的な変化に対応できる柔軟性も重要です。家族構成やライフステージが変わる中で、住まいがその変化に適応できるよう、リフォームや拡張が容易な設計を考慮することが大切なのです。
今回は、住まいに関する社会的な変化を踏まえながら、人生設計に基づいた住まい選択の重要性について説明いたします。
マルチステージの時代
最近までは人生を「教育を受ける期間」「仕事で収入を得る期間」「退職し余生を楽しむ期間」と3つのステージに分けて人生設計をする考え方が一般的でした。
たとえば「○歳までは○○大学で学び、60歳まで○○社で働き、退職後は趣味の○○を楽しむ」のような考え方です。
しかし、学び方も働き方も大きく変わっており、人生を3つのステージで考えるのではなく、教育を受けながら仕事をしたり、趣味を活かした副業を持ったりと、1つの人生として同時に複数のことを楽しむマルチステージモデル
が一般的になりつつあります。
また、1960年代のように男性の平均寿命が70歳にも到達しない時代には60歳で仕事を退職し、あとは余りの人生として「余生」を楽しむ考え方で良かったのかもしれませんが、1970代には平均寿命が70歳を超え、2013年にはついに80歳を超え、厚生労働省が発表する2021年分の簡易生命表の概況によると2022年における日本の平均寿命は、男性が81.05年、女性が87.09年となりました。
仮に60歳で退職すると、男性は21年程度、女性は27年程度を余生とすることになり、「余り」の人生というにはあまりに長いと言わざるを得ません。
現役世代の移住が増加
退職した後は職場に縛られることなく自由に居住地を決定できることから、趣味や理想のライフスタイルのために住まいを変える移住が注目されていましたが、近年では退職せずともリモートワークなどで通勤の必要性がなくなり、それをきっかけに移住するケースも増えています。各都道府県や自治体では若年層も含めた移住者獲得のための助成制度や説明会、相談会などに力を入れています。

ふるさと回帰支援センターが発表している「2022年最新版 移住希望地域ランキング(対象:新規の窓口相談者)」では静岡県が3年連続の第1位、次いで長野県、栃木県、山梨県、福岡県の順になっています。観光で訪れたい地域とは異なり、5位の福岡県以外は、すべて東京都からのアクセスが良い地域であり、移住の考え方が「老後はのんびり田舎暮らし」から「仕事と新しい暮らしの両立」に変わり、高齢者だけではなく現役世代にも身近なものになってきたことを表しているようにもみえます。

高齢者の移住と若年者の移住
年齢により移住に対する印象が違います。平成26年(2014年)度の国土交通白書では実際にUターンやI/Jターンをした人の、移住した前後で感じたギャップについて調査結果を報告していますが、生活環境や地域特性については全世代共通に概ね良好であるのに対して、家計収支など経済的な面で現役世代の不満が高くなっています。
若年層に限らず地方移住には経済的な裏付けが欠かせません。現役世代のうちにセカンドライフに向けた資産準備に取り組む大切さも、さまざまなセミナーや相談会などで周知されています。



二拠点居住(デュアラー)
デュアラーとは、「デュアル(二重の)」が起源で、生活拠点が二重にある人をいいます。一般的には都会と田舎に住まいを構えるデュアルライフ(二拠点居住)を指します。

例えば、東京都に勤務地があるため平日は都内の賃貸住宅に住み、週末は遠く離れた地方にある自宅で趣味に没頭するなど、仕事をする場所と休日を過ごす場所を分けるデュアラーが多いようです。趣味を重要視する方に多く、サーフィンやアウトドアライフなどを満喫するために生活拠点を二重にしています。デュアラーの場合、どちらかの居所は自己所有であることが多いようです。
大きなメリットは、仕事と無関係な、これまでとは異なる性質の友人や知人が増えることと、毎週末などにリフレッシュできること、さらには退職後ではなく、現役世代が取り組める点です。
一方で、二拠点の居住費が必要(光熱費などの基本料金もかかる)であり、場所によっては移動に時間とお金がかかるなどのデメリットもあります。また、地域によっては若年層の移住を快く思わない地域もあり、受け入れてもらうのに時間がかかるケースもあります。
NECグループのカフェテリアプランにおける基本ポイントは、本人およびその家族が居住する賃貸物件の家賃の使用料にも充てられます。二拠点のうち職場に近い賃貸住宅の家賃が一部でも補助されるのは、デュアラーにとっては大きなメリットです。
まとめ
人生や働き方に関する考え方が多様化する中で、住まいについても将来を見据えた柔軟で自分らしい選択が求められています。セカンドライフを含めた人生設計から、いま現在の住まい選択を考える必要があるのです。
住まいの選択に悩んでいる方やセカンドライフを控えた方は、本コラムをきっかけに住まいを含めた今後の人生設計について考えてみてはいかがでしょうか。