年金
2026-06-02

NEC退職金・年金制度の理解と活用

目次


退職金・年金制度は、多くの人にとって人生で受け取るお金の中でも最大級の金額になります。しかし実際には、「会社が用意してくれるもの」という認識が強く、制度の仕組みを詳しく理解している人はそれほど多くありません。

ところが現在、多くの企業の退職金・年金制度は、かつてのように「会社が退職時の金額を決める制度」ではなく、制度の理解や運用の判断によって将来受け取る金額が変わる仕組みに変化しています。

NECの退職金・年金制度もその典型です。現在の制度は、大きく次の4つの要素で構成されていますが、④は選択できる人が限られているため①~③が主な制度です。

 

① 退職一時金(一時金受け取り)

② 確定拠出年金(DC年金)(一時金または年金を選択)

③ 前払い退職金制度(②か③は入社時に選択制、③から②の変更のみ可能)

④ 確定給付年金(DB年金)(2024年10月制度改定時に選択した方のみ)

図 1:NEC退職金・年金制度


それぞれの制度の特徴を理解することで、退職金との向き合い方は大きく変わります。また、④の確定給付年金(DB年金)は対象となる社員が限られているため、本コラムでは主に①~③の制度について解説します。

 

① 退職一時金(一時金受け取り)

NECの退職金・年金制度の一部は、退職一時金制度となっています。これは理論年収に乗率をかけた金額を積み立て、その累計ポイントをもとに退職時の退職金額が決まる仕組みです。

 この制度の特徴は、退職一時金が勤続年数ではなく、昇降給や昇降格による理論年収の増減が反映される点です。

NECの場合、この退職一時金は退職金・年金全体の約20%を占めています。割合としては大きくありません。

 

② 確定拠出年金(DC年金)(一時金または年金を選択)

NECの退職金・年金制度の中心となっているのは、確定拠出年金(以下、DC年金)です。会社が毎月掛金を拠出し、その資金を社員自身が投資信託などで運用します。会社が拠出する毎月の掛金も、退職一時金と同じく理論年収に乗率をかけた金額となっています。

また、運用の成果によって将来の資産額が変わるため、DC年金の金額は運用結果に大きく左右されます。NECの退職金・年金制度の中でも、将来受け取る金額に最も大きく影響するのがこのDC年金で、特徴は次の3つです。

 

(1)運用益が非課税

(2)60歳まで原則引き出せない

(3)転職しても資産を持ち運べる

 

税制面では非常に優遇された制度ですが、その一方で、どのように運用するかを自分で判断する必要がある制度でもあります。長期運用では利回りの違いが退職金額に大きく影響します。例えば、毎月2万円を30年間積み立てた場合、積立総額は720万円ですが、運用利回りが1%では約835万円、4%では1,346万円と最終的な資産額に511万円もの差が生まれるケースがあります。

 

③ 前払い退職金制度という選択肢

NECの制度にはもう一つ特徴があります。それが前払い退職金制度です。これは入社時にDC年金に加入せず、本来DC年金に拠出される金額(退職金の原資)を「前払い退職金」として、毎月の給与に上乗せして受け取る制度です。毎月の収入が増えるため魅力的に感じる人もいるかもしれませんが、この制度にはメリットとデメリットがあります。

また、DC年金に一度加入した場合、前払い退職金に変更できませんので、ご注意ください。

 

◆メリット

・毎月の収入が増える

・資金を自由に使える

 

◆デメリット

・給与所得として所得税・住民税の課税対象になる

・長期運用の機会を失う

 

DC年金では運用益が非課税になりますが、前払い退職金は給与として支給されるため所得税や住民税、社会保険料の対象になります。DC年金と前払い退職金の主な違いは表 1のとおりです。

 

表1:DC年金と前払い退職金の比較

前払い退職金をiDeCoに回すという発想

前払い退職金を受け取り、その資金をiDeCoに拠出するという考え方もあります。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象になるため、前払い退職金として受け取った金額をそのままiDeCoに拠出した場合、所得税や住民税の計算上は収入と控除が相殺され課税される所得は増えません。一見するとDC年金と同じ税制効果を得られるようにも見えます。しかしここで注意したいのが社会保険料です

前払い退職金は給与として支給されるため、健康保険料や厚生年金保険料の計算の対象になります。一方、iDeCoの掛金は社会保険料の計算には影響しません。つまり、所得税や住民税は相殺されても、社会保険料の負担は免れることができず、この点はDC年金との大きな違いです。

 

図 2:「iDeCoに回せば同じ」という錯覚


 

前払い退職金を選ぶ人の典型的な失敗

前払い退職金制度を選択した人が最も失敗しやすいポイントは、退職金としてのお金が生活費の中に埋もれてしまうことです。DC年金では掛金が自動的に積み立てられ、原則60歳まで引き出すことができません。そのため、意識しなくても老後資金が形成されていきます。

一方、前払い退職金は給与として支給されるため、生活費として使われてしまう可能性があります。最初は老後資金として貯めるつもりでも、時間が経つにつれて生活費や教育費などに使われてしまうケースも少なくありません。

前払い退職金を選択する場合には、老後資金として別口座で管理するなど、自分で資産形成の仕組みを作る必要があります。

退職金・年金制度は会社が提供してくれるものですが、その制度を理解しているかどうかによって将来受け取るお金の意味合いは大きく変わります。制度を「会社の制度」として眺めるのではなく、「自分の老後資金の仕組み」として理解することが、安心できる将来につながります。